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解析応用編

1. 傾向スコア(プロペンシティスコア)propensity score (PS) を用いた解析方法

はじめに

このサイトは無料の統計ソフトである「R」を用いて誰もが比較的簡単に傾向スコアを用いた解析方法である
Inverse probability of treatment weighting (IPTW)法、又は
傾向スコアマッチング(プロペンシティスコアマッチング)propensity score (PS) matching法
を実行できるように説明したサイトです。
臨床医のためのRコマンダーによる医学統計解析マニュアル」の読者を対象に作成しており、本書の内容を理解しているものとして解説していきます。

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傾向スコアの理論背景に関しては成書を参考にして頂くこととし、ここでは傾向スコアに関する簡単な説明と、Rによる具体的な解析方法に関してご説明させて頂きます。

傾向スコアをうまく利用することで観察研究のデータからある特定の治療効果を無作為化割り付け試験のように解析することができると考えられており、エビデンスレベルも無作為化割り付け試験に準じるものとして扱われるため近年傾向スコアを用いた論文が数多く見られるようになってきています。
例えば、通常ある治療の効果を判定する際に患者背景の補正や交絡因子を取り除く方法としてmultivariate Cox regression analysisやmultivariate logistic regression analysisが行われてきましたが、IPTW法やPS matching法を使用してこれらの解析を行うことでより正確に調整ハザード比やオッズ比を算出することが可能だと考えてられいます。


傾向スコアとは

傾向スコアを一言でいうと、ある治療を割り当てられる確率ということができます。
無作為化割り付け試験では治療群とコントロール群に割り当てられる個々の患者の確率は等しく50%です。

しかしながら実際の臨床の現場においては様々な患者の背景を考慮して治療が割り当てられるため、治療群とコントロール群(場合によっては治療A群と治療B群の比較)では患者背景が異なることがほとんどです。このような治療の割り当てに影響する因子を用いて治療割り当ての確率である傾向スコア propensity score (PS)を算出し、同じ傾向スコアの得点の患者同士を比較することで、疑似的に観察研究のデータを無作為化割り付け試験のように解析するというのが傾向スコアを用いた解析の概念です。

最も直感的に理解しやすい解析方法は、同じ治療割り当て確率の患者同士でペアを作って治療群とコントロール群を比較する傾向スコアマッチング(プロペンシティスコアマッチング)propensity score (PS) matching法です。このように傾向スコアの近い症例同士をペアにするマッチング方法をcaliper matchingと呼び、症例1例に対してコントロール1例を割り当てる1:1マッチングが一般的です。




さらに近年は傾向スコアの逆数の値を用いてその患者の予後に与える影響度に重み付けをして解析を行うinverse probability of treatment weighting (IPTW)法という方法が提唱されており、周辺構造モデル marginal structral modelとも呼ばれています。

現在の印象としては傾向スコアマッチング法による解析結果の方がよく論文で見かけますが、実は傾向スコアマッチングに比べIPTW法の方が解析が簡単で、患者背景の調整もよりうまく行えると認識されています。

傾向スコアマッチングには下記に示す問題点があるからです。
まず1点目ですが、傾向スコアマッチングでは通常治療群、又はコントロール群の少ない方の患者群に合わせてマッチングが行われるためどうしても検定する際の症例数が少なくなってしまいます。症例数が少なくなれば有意差が検出され難くなりますので、本来あるはずの差を検出できなくなる可能性が出てきます。また2点目として、傾向スコアマッチングでは患者背景がどちらかの群に偏ってしまい、その結果を本来の治療効果を検討したい標本集団(もしくは母集団)全体にそのまま適応してよいのかという問題が必ずついて回ります。例えば、コントロール群に合わせたマッチングを行う場合、治療を受けなさそうな患者群での治療効果が判定されることになります。そういった意味でもIPTW法の方が実際の臨床に即した解析だと解釈することができます。

詳しくは
Austin PC. The performance of different propensity score methods for estimating marginal hazard ratios. Stat Med. 2012 Dec 12. [Epub adead of print] によくまとまっていますので参照して下さい。

Inverse probability of treatment weighting (IPTW)法
Propensity score matching法(1:1 caliper matching)で治療効果を推定する

Inverse probability of treatment weighting (IPTW)法でもPS matching法でも
Time-to-eventデータの治療効果はCox回帰分析で調整ハザード比として、
院内死亡や短期的な合併症の出現の有無等、エンドポイントに時間情報を含まない場合にはロジスティック回帰分析で調整オッズ比として治療効果を評価します。

それでは実際の方法論についてみていきましょう。
と言いたい所ですがこれ以降は有償版の
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現在最も信頼されている傾向スコアを用いた最新の解析方法を行うことでぜひワンランク上の雑誌への投稿を目指して下さい。

「解析応用編_傾向スコアを用いた解析プログラム」には傾向スコアを用いた解析方法であるIPTW法、及び傾向スコアマッチング法(1:1 caliper matching)を用いてオッズ比及びハザード比をRで自動的に算出するためのプログラムで、その実行方法の解説書が含まれております。

「臨床医のためのRコマンダーによる医学統計解析マニュアル」の内容を理解しているもの として説明しておりますので、未購入の方は合わせて購入をお願い致します。

現在この傾向スコアマッチング法を商用統計ソフトで解析したい場合、例えばIBM社が提供しているSPSSを用いて解析を実行するためにはSPSS Ver 19.0以上が必要であり、さらに講習会費用 \21,000-、東京への出張旅費等が必要になります。
さらに行える解析はPS matchingのみでIPTW法はできないようです。
一応このSPSSを使ったPS解析コースのURLを貼っておきます(コチラ)。

これらを踏まえた上で
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